第5話

▫️



「ん……っ、」


ズキっと痛む頭を抑えながらゆっくりと目を覚ますと、見下ろしてくる碧くんと目が合った。


無表情の彼に驚き、ビクッと身体を震わせる。



「蘭が起きるのずっと待ってた」


「ごめんね……碧くん」



碧くんは私の胸元に顔を埋め、キツく吸い付く。痛みが走ったけど拒絶はしていけない。

チラッと視界の端に見えたのは小型のナイフで。緊張感が走る。


まさか、私が気絶している間、自分のこと傷つけていないよね……?


碧くんの身体を確認するけど新しい血は出ていなそうだ。



「碧くん、そろそろご飯食べないと……」


「嫌だ。ずっと蘭と繋がっていたい」


「でも、お腹空いたでしょう?」



昨日から殆ど私と碧くんは身体を繋げていた。

土日の殆ど碧くんは私を離したがらないから、止めさせるのも一苦労で。

下手するとご飯を食べずにずっと繋がって居ることもある。


グゥ、とお腹を鳴ってしまうと碧くんは私の身体に愛撫していた手を止めて、じっと見下ろしてきた。



「ご飯食べたい?」


「うん。昨日の夜からご飯食べていないから」


今朝だって買い物に行けただけで、帰ったら抱かれてしまったから食べれていない。

壁時計を見るともうお昼を回っていた。



「碧くん、ご飯食べてからまたしよう? ね?」


「……」


ただでさえ痩せているのに……。

自分の身体に無頓着な碧くんを気にかけてあげないと、倒れてしまうかもしれない。



碧くんの頭を撫でてそう優しく言うと、少しだけ躊躇いつつも頷いてくれた。


漸く私の中から彼が離れ、少しだけ安堵する。

ご飯を食べるといってもこんなに汚れてしまっているから、シャワーを浴びないと。



「碧くん、シャワーを浴びようか」


「分かった」



碧くんは軽くキスをして私の事を横抱きしたのだった。

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