第3話

ーー過去ーー








「ねぇ、俺と付き合わない?」


「…………、」


碧くんから初めて声を掛けられたのは放課後の教室で。

その日は入学して間もない日だった。


急に前の席に座ったと思えば、振り返った碧くんが信じられないような事を言ってきたのだ。


勿論困惑した。

彼のことを知ったのは入学式の時だったし、彼も私を知ったのはその日だったハズで。


そんな事を言われても困るだけで。

私は少し引き気味になりながらもはっきりと答えた。



「む、無理かな」


「え〜残念。」



断ったのにも関わらず、笑いながらそう返してきたことに彼がやはり冗談で言ったのだと分かり、困惑してしまったことが恥ずかしかった。


冗談だとは思っていたけど、どうしよう……冗談も通じないのかと思われたらいたたまれない。


「でも諦めないから」


「え……?」


ポカンと彼を見つめるとニコリと微笑み手を伸ばしてきた。そして胸元まである髪を一束掬ったと思えば、口元まで持って行って。


ちゅ、と口付けた。

唖然する事しか出来ないでいる私に妖しい笑みを浮かべ、真剣な瞳で見つめてきたのだった。






それからというものの何故か彼に付き纏われる事になった。


碧くんの容姿は恐ろしい程整っていて、更に人当たりもいいので当然のように女の子達からモテた。

そんな人気者である碧くんが私なんかに付き纏うのだから勿論、女の子達から反感を喰らい罵倒されるのは日常茶飯事だった。



何度も碧くんに告白されたけど、その度に断ってきた。

付き纏うのを辞めて欲しいと訴えたこともあったけど、笑顔でとぼけられて結局は辞めてくれなくて。

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