第2話
「碧くん、部屋行こう」
「…………」
碧くんは暫く泣いてこくんと頷いてくれた。
チラッと床を見る。
何時から碧くんは手首を切ったのだろう。
結構な量が出てることに心配になるけど、早く血を止めてあげないと。
床は後で拭きにいこう……。
部屋へ入り、常にテーブルの上に用意してある救急箱から消毒液と大きめのカットバン、包帯を手に取り向かい側に碧くんを座らせた。
俯いてしまったので碧くんの瞳が隠されてしまう。
「碧くん……切ったら駄目だよ……。痛いでしょう」
浅い箇所もあるけど……深く切った所はとても痛々しい。出会った時から碧くんはリストカットをし続けているからか、切り傷の痕が残っている。
「蘭が俺を見捨てて居なくなっちゃう方が嫌だ」
「碧くん……」
治療をしてから包帯を巻いてあげる。
あの時のことが余程、碧くんを追い詰めてしまったんだ……。
私の責任だ。
碧くんと離れた方がいいと思った。
だけどそれは間違いだったと私の前に現れた碧くんが自分の身体を切り付けた瞬間、直ぐに気付いた。
ギュッと唇を噛み締め、碧くんの手を握る。
買い物に行ったたった30分でも、碧くんはとても情緒不安定になり自分自身を痛めつけてしまう。
碧くんと出会ったのは高校の時だったけど……その時はここまで酷くなかった。
彼をここまでさせてしまったのは、私のせいだ。
私が碧くんから離れなければ、きっとここまでならなかったと思う。
「蘭……」
「っ、んん、」
包帯を巻き終えると同時に碧くんに抱き寄せられ口付けられてしまった。
抵抗してはいけない。
彼の好きなようにさせると舌が口内に割り込み、激しく絡められた。
碧くんのキスは私を貪るような激しさで、息継ぎするのが大変で息苦しい。
「は、んん、んっ」
クチュリ、クチュッと舌の絡み合う卑猥な水音に耳朶までもが犯されているようで。
羞恥が湧く。
必死に碧くんに応え、どうしようもない苦しさに碧くんにしがみつく。
「蘭、抱きたい……」
「……っは、ん……は、……う、ん……っ、は……いいよ」
漸く離された時には息も絶え絶えで。
了承すると直ぐに抱き上げられた。
碧くんの首に手を回し、彼の胸に顔を埋める。
ドクン、ドクンと鼓動を打つ彼の心臓の音に、ちゃんと碧くんが生きてるということを実感して安堵した。
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