第40話

【詩音 side】



気に入らない。

目の前で睨みつけてくる春香に少しだけ似た顔を殴りたくなる衝動を抑える。


弟だからとはいえ春香と血が繋がっている事も気に食わない。


やっぱり会うなんて言わなきゃよかったかも、なんて今更だ。



「姉ちゃんは」


「……君が知る必要ある?」


「あるに決まってんだろ!? お前らのせいで、姉ちゃんはーーーっ!!」


怒りで叫び出した口を容赦なく手で塞いだ。



「他の人に知られたら春香が周りからどう見られるか考えたら? それにその口うるさいから声抑えてくれる。これでも我慢してるんだこっちは。」


「っ!!」



舌打ちをして手を離し、汚れた手をおしぼりで拭き取ると弟の方が苛ついたように髪をクシャとかきあげた。



「……姉ちゃんは無事なんだろうな」


「何を言っているの。当たり前でしょ。春香は俺たちの元で元気にしてるよ。君のことなんて忘れてね」


「嘘つくんじゃねぇよ! 姉ちゃんにとって俺がどれだけ重要が自負してる。姉ちゃんがお前らのことに我慢しているのも俺のことで脅したからだろ」


「へぇ。」



やっぱり腹が立つ。

自分でも歪んだ笑みがこぼれたのが分かった。

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