第39話
【隼 side】
「っ……」
電話を終えたスマホを構わず投げつけた。
ようやく繋がったかと思えば、話があると淡々に告げられただけで。
人1人誘拐しているというのに全く罪の意識の感じられない平坦さの声音に腹が立つ。
ぐしゃりと前髪をかきあげ、舌打ちをした。
「っざけんな」
俺のせいで姉ちゃんはアイツらに……。
何も出来ない自分に腹が立つし、助け出してやる事も出来ない力のない自分が憎い。
学校に行けてるのも普通に生活していけてるのも全部、姉ちゃんのおかげだというのに。
姉ちゃんに恩返ししてあげたいと思っていたのに、アイツらのせいで壊された。
「……」
画面の割れたスマホに堪らず乾いた笑いが込み上げる。
物に当たったって姉ちゃんは帰ってこないのに馬鹿だ。
アイツらに誘拐されてから何度も連絡したって返事をろくに返さなかったというのに、今更話があるって?
姉ちゃんと会えなくなって2ヶ月になる。
これはまたとないチャンスだって分かっている。話、ね。
指定された場所はここから近い。
アイツらの手のひらの上で転がされているような気がして、苛立つが会わないわけにはいかない。
なんとか話をつけてせめて姉ちゃんの姿を確認したい。
ぐっとスマホを握りしめ、指定された場所へと足を進めた。
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