第36話

コクリ、と唾を呑む。

蓮音が無条件で隼と会わせてくれるのだろうか。

何か条件があるの?



「れ、蓮音、本当に?」


「うん。詩音が許可したら、だけどね〜。無理だろうけど」


「?」


最後にボソッと言った言葉が聞き取れず、首を傾げる。困惑する私に蓮音は笑うと何でもないよと付け加えた。



「でもさぁハルちゃんのお願いをきいてあげるのに、何も見返りがないのはおかしいよねぇ?」


「っ!」



やっぱり……。

蓮音が何も条件無しに会わせてくれる筈が無い。予想はしていたとはいえ、ガッカリしてしまう。


蓮音と詩音は私が1番大切に想っているのが隼だというのが、気に食わないんだろうから。


でも、私を脅して閉じ込める双子の彼らより、自分の家族の弟の方が大切に決まってる。

まだ私を好きだというのなら、理解出来る。


好きなら好きで、普通にアプローチしてくれれば考えることだって出来た。

だけど、閉じ込めて監禁するのはどう考えたって異常だし、好きな人にする事をじゃないと思う。



「な、何をすればいいの」


とんでもないような『見返り』を求められたらどうしよう。

震えた声でそう聞くと、蓮音は私の手を握りしめた。


そして立たせられる。



「簡単だよ。ハルちゃんからキスしてくれればいいよ」


「え……?」



思ったより軽い内容に目を見開いた。


そんなので、いいの……?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る