第32話

「あ、ありがとう……」


何て言えばいいか分からなかったけど、てりあえずお礼を言うと。

詩音がふっと表情を弛めた。そして緩やかに口角を上げて笑う。


「うん。どういたしまして。」


「僕もハルちゃんの為にいっぱい買ってあるよ!? 詩音だけお礼言われるなんて狡いよ」


「え!?」


ムッと唇を尖らせた蓮音が拗ねた声を上げた。


ビクリと身体を引き攣らせると、詩音が私の手からカップを取った。

何でカップを取られたのか分からず首を傾げると。


手の甲で頬に触れられる。


「蓮音も俺も春香の為に何でもしてあげる。だから、ご褒美が無いといけないよね」


「そうだよ。ハルちゃんからご褒美を貰わないと」


妖しい雰囲気に、思わずこの場から逃げ出したくなったけど囲まれてしまう。

眠れないから、と飲み物を飲んでただけなのに何で急にこんなご褒美だ、なんて言い出すのか。


たじろぐ私に、蓮音が私の指を掴み口元を寄せる。そして甘噛みされてしまった。


ピク、と肩を震わせると詩音が顔を寄せて唇を塞いでしまう。

驚いて目を見開くと、瞳をすっと細めじっと見つめられた。


「んっ……んん」


舌を軽く噛まれ、ジンとした痛みが走る。目を瞑ると、角度を変えて深くキスをされる。


「詩音ばっかずるー」


ボソッと呟いた蓮音がチッと舌打ちをすると、ロングスカートを太ももまでめくり上げて太ももへと指を滑らせた。


「んんんっ!」


擽ったさに身体を引き攣らせ、顔を離そうとしたのに詩音に後頭部を抑えられてしまった。

蓮音がふっと笑いながら太ももを緩やかに揉む。

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