第31話

「し、詩音……?」


「何?」


「え、えぇと……」


何でそんなに見つめてくるのか。居心地の悪さを感じて、視線を逸らしたくなるけど詩音の瞳が逸らすことを許さない。


「ソファーに座らないの……?」


「春香を真っ直ぐ見たいからここでいい」


「……」


すっと伸ばされた手が私の頬に触れる。そのまま撫でられ、擽ったくて身を竦めた。

なんとなく恥ずかしくて、目を伏せると。



「ハルちゃんお待たせ〜!」


「!! あ、ありがとう」


蓮音の明るい声が聴こえ、慌てて顔を上げる。

マグカップを持った蓮音から受け取り、口を付けた。


美味し……。

どうやらカモミールティーだったらしい。


確か安眠効果があるんだっけ……?


「…………、」


の、飲みづらい……。

2人から視線を感じる。

チラッと見ると、詩音は無表情で蓮音はニコニコと微笑んで見つめてきている。


そして何故か蓮音も詩音の隣にしゃがみこんでる。


普段と違って私の方が2人を見下ろすかたちに違和感を感じる。



「ハルちゃん美味しい?」


「う、うん。カモミールティーなんてあったんだね?」


知らなかった。



「 俺が買ってきておいた。春香はコーヒーよりも紅茶の方が好きみたいだから。何種類か用意してる」


詩音が………?

確かに私は紅茶の方が好きだった。


気づかれてたんだ……。

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