第21話

「ハルちゃんって肌がほんと白いよねー。だから痕も付きやすい」


自分が付けた痕を指でなぞりながら、恍惚としている蓮音にゾッとする。

こんな噛み跡をたくさん付けて、そんな満足そうな顔をするだなんて異常だ。


だけど、私に抵抗する術などなくされるがままでいるしかない。

ましてや、何よりも大切な弟を人質にとられているような状況で私の行動と言動1つで、弟の人生を壊しかねないだなんて。


どうしようもないこの状況に絶望しか感じない。


また違う箇所を噛まれながら、ぐっと涙を堪えていっそ気を失ってしまえればと願いながら歯を食い縛った。





【詩音side】



「ただいま」


春香が好きそうなスイーツ片手に、玄関を開けると。


「おっかえり〜」


ニコニコと嬉しそうな瓜二つの顔をした蓮音が近付いてきた。

いかにも上機嫌だと分かるその表情に思わず顔を歪めると、鼻で笑われた。



「あはは、なにその顔。詩音ってば、ハルちゃんの前でそんな変な顔しちゃダメだよ〜? ハルちゃんビビっちゃうから!」


「うるさ……。春香は」


「ん?んん〜、寝ちゃった所。てか、無理させ過ぎたかも?」



ヘラッと口許を緩める蓮音にため息を返す。

無理、ね。

靴を揃えて家に上がり、春香の場所までゆっくりと向かうと。


蓮音も後ろから着いてきた。

手に持ってる箱を見て、何それと聞いてくるが無視する。


ベッドの上にいるのを確認して、自分でも顔が緩むのが分かった。

顔色は……悪くなさそうだけど、眉間に少しシワを寄せてる。ベッドの縁に腰掛け、春香の頭を撫でた。



「蓮音、また跡付けたの」


「うん。だってー、ハルちゃんが可愛いのがいけないよね」


「血が滲む程噛むことないでしょ」

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