第17話
願っても今の現状では叶わないと思っていたことを言われて、叫ぶように会いたいと返した。
「あはは、だってよー詩音」
「……ムカつく。たかが弟如きで春香の思考を奪うなんて」
「まぁ、こうなるって分かってたから本当はハルちゃんに弟との動画を見せたくなかったんだけどぉー。あまりにも言うこときかないから仕方ないでしょー」
「春香」
冷たい声にビクッとする。
相変わらずハサミを向けられたままの状況で、息を呑む。
見せられている携帯画面には隼が笑みを浮かべて写っている。
「こいつのことそんなに大事?」
「え……」
こ、こいつ、って。
隼のことを言っているの?
そんなの勿論大事に決まっている。
たった一人の家族なんだから。
「あー、詩音落ち着けってー」
「こいつの人生どうにでも俺達には出来る。言っている意味分かる?」
何を言っているの……。
「な、何を……」
思わず乾いた声が出る。
詩音は珍しくもニッコリと微笑むと、その刃先を何故か携帯画面へと向けた。
そしてそのまま隼の顔目掛けてハサミの刃先でギリギリと傷つけた。
パキ、と画面が割れる音がする。
「僕の携帯になんてことしてくれるのー」
「つい。ねぇ、春香。こいつの人生めちゃくちゃにしてやってもいいんだよ? 大学に受かろうがそれを不合格に出来ることも、全ての進路を無くすことなんて簡単に出来ちゃうんだ」
「っ!」
人の人生を簡単にどうにでも出来ることをそんな笑顔のまま言ってくる詩音が恐ろしくて、声にならない悲鳴をあげそうになる。
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