第16話

このままじゃ、私がどうにかなってしまいそうで……。

自分のことが分からなくなってしまいそうで、怖い。



「春香、どうするの」


「っ!」


「……ハルちゃん、僕達が優しくしてるんだからさ早く決めてよ。ハルちゃん次第では脅してもいいんだよぉ?」



物騒な言葉に蓮音を見ると、素早く携帯を操作したかと思うと画面を見せてきた。

それはどうやら動画のようで。


不思議に思って見つめると。



『姉ちゃん、 大丈夫かよ』


『だ、大丈夫よ。ちょっと転んだだけだし……』


『相変わらずドジだな』




「っ! 隼!」



動画から聞こえてきた声に目を見開く。

そこには、過去の私と弟の隼が一緒にいた。

盗撮されている物のようで、私たちは違う方向を向いて楽しげに話してる。



「弟の隼くん。確か高校3年生になるんだっけー」


「名門大学に行く為に勉強、頑張っているんだよね」


「そうそう、その為にハルちゃんは必死に仕事頑張って養ってあげてるんだもんねぇ」


「隼くんは突然いなくなった春香を必死に探してるみたいだよ」



私だけじゃなく、隼のことまで把握されていて震えることしか出来ない。

そうだ、何とかこんなおかしな所逃げ出さないと。


隼が……隼が大変な目に。



「ハールちゃん。ね、弟に会わせてあげようか?」


「え……?」



隼に会わせてくれる……?

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