第7話

蓮音がうんざりとしたような口調で呟いた。


怒っている……?

全くそんな素振りをしていないように思うのだけれど。



「怒ると面倒なんだよねー、あいつ。だからさ、ハルちゃん大人しく詩音の言うこときいてくれないかなぁ?」


「そ、そんなの、知らない! ここから出してっ」


「……ハルちゃん。いい加減僕でも怒っちゃうよぉ?」



ビクッと思わず身体を震わせる。

一段と低い声音を出しているというのに、その端整な顔には満面の笑みを浮かべている。


ちぐはぐな蓮音の様子に恐怖心を抱く。



「あっは。もしかして怖がってくれてるのかなぁ?」


「っ、」


「こうやって自由にさせているけど、場合によってはハルちゃんに目隠しをしてそれこそ動けないようにしてあげてもいいんだよ?」



反吐が出る程の内容に顔を顰める。

スっと足を撫でられ、不快感で手を払おうとした。

だけど、詩音の右手が今度は私の首へと伸ばされた。



「ぐっ……っ!」


そのまま首を絞められてしまう。


「あはは。苦しい?」


「っ!」


ーー狂っている。

そうとしか思えない。

人の首を絞めておきながら、笑っているだなんて。


必死に詩音の手を引き剥がそうと、思いっきり詩音の手に爪を立てる。

だけど、ますます首を圧迫する手に力を込められてしまう。


生理的な涙で視界が歪んだ時だった。




「詩音。なにしてんの」


冷たい声が割り込み、ピタッと詩音の動きが止まる。

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