第6話

あの二人はどうやら双子のようで。


黒髪の方―――詩音が退屈しないようにって、大量の本を本棚に入れていた。



『春香は本が好きだよね』


そう微笑みながら言われたっけ……。


人の許可なくこの部屋に閉じ込めた人からの本を読む気になれなくて、無視をしていたけれど本に罪はない。


詩音がこの部屋に入ってくる度、本を読んでくれなかったんだね、と残念そうに呟いていることを思い出す。



どこにあるのか把握出来ていないけれど、この部屋には監視カメラが設置してあるらしい。


ほんと信じられない。


つまり、今この瞬間にもカメラは動いていて私のことを写しているはずだ。

思わずげんなりしてしまう。


本のタイトルを眺めると、私の好きな作家のものばかり。いつか買おうとしていた新作まである。



「……、」



読もうと思ったけれどやめた。

一体、いつから私のことを知っているのか分からないけれどあの二人の思うがままに行動するのは嫌だ。



はぁと小さなため息が自然ともれる。


どうにかしてここから出られないか考えようか、そう思った時。



「ハールちゃん」


「んっ!?」



急に気配もなく背後から抱きしめられ、驚きで身体を大きく跳ねらせた。

思わず悲鳴が出そうになったけれど、口を手で塞がれてしまった。



「しー、だよ。詩音に盗聴されているから、ね」


「っ!? 」


耳元で囁くように言われる。その喋り方から、詩音ではなく蓮音の方だと瞬時に判断する。


いつの間にいたというのだろうか。


全く気配を感じなかったというのに。

心臓がばくばくと鳴っている。



「ハルちゃん。忠告するけど…あんまり、詩音のこと怒らせない方がいいよ?」


「ど、どういうこと……?」


唐突の内容に、声が上ずる。

怒らせない方がって……詩音が怒っているとでもいうのだろうか。



「折角ハルちゃんの為に詩音、本を補充してあげてるから読んであげてってことかなー。詩音ね、悲しんでるけれども怒ってもいるんだよねー」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る