第14話
唇が軽く離され、すぐ目の前にある弟さんの顔を見つめると、ふっと口角を上げた。
そして、指が私の首元へと伸びる。
「紗奈が僕たちのものになる。たったその一言でいいよ」
「あはは。そうだね薫。」
簡単に言ってくるけど、躊躇ってしまう言葉だった。
この2人は異常だ。
その言葉を言うことによって里奈が解放されるのなら、いい。
だけど。
「里奈は……今、」
「紗奈ちゃん。今は里奈ちゃんの事じゃないでしょ。あ、わざと? 俺らを怒らせようって魂胆だったり?」
「違っ、」
里奈がどうしているのか知りたかっただけなのに。
もしあのまま連れてかれてから解放されていないとしたら、里奈は大変な目に合ってるのかもしれない。
そう思ったら、すぐにでも里奈の様子を見たかった。
「紗奈ちゃんは里奈ちゃんばっかだね。」
「紗奈がどうこう出来る問題じゃないよ。それより早く言うの? 言わないの? はっきりしたら。ネットにでも、この画像載せるよ。」
「っ! わ、分かったから、待って!」
弟さんが苛ついた声をだして、タブレットを操作しようとするのを見て慌ててその手を止めた。
言ってしまったら最後、最悪な未来しか待っていない気がしてしまうけど里奈に辛い思いをさせるわけにはいかない。
それなら例え自分を犠牲にしてでも……止めないと。
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