第5話

で。

なぜ佐久間さんと弟さんはここにいるのだろう。


それに、どうして私がここを通るって分かったの……?

何処に住んでるかは曖昧にしか教えなかったのに。



「紗奈ちゃん。今から俺の家においでよ」


「えっ!?」


急に何を言い出すの!?

佐久間さんの家に……?

いやいや、今日初めて会ったばかりの人の家にお邪魔する意味が分からない。


というか、そんなの絶対にお断りだ。


「い、妹が家で1人で待ってますのでーー」


「里奈は僕達の家にいるよ。」


「は、」



弟さんの言葉に固まってしまう。


え、何を言ったのこの人。

私の妹まで何で知ってるの。


里奈が佐久間さんの家にいる……?


「っ、ど、どういう事ですか!?」


堪らず佐久間さんに問いかけると、微笑まれてしまった。

ド、ド、と心臓が早鐘を打ち、わけが分からない恐怖に崩れ落ちそうになる。


何で里奈が……?



「り、里奈は……無事なんですか!? あの子、寂しがり屋で泣き虫な子なんです。ま、まさか里奈に何かしたんですか!?」



「ちょーっと落ち着いて。里奈ちゃんは大丈夫だよ。お姉ちゃんが俺らの家にいると伝えて、着いてきてもらっただけ。」



佐久間さんが慌てふためく私の肩を抑えて、優しい声音でそう言ってきた。



「何で私の家が分かったんですか……? 教えてないのに……」


「紗奈のことなら何でも知ってる。それに今日、晃が紗奈と会ったのは初めてじゃないよ」


「え……?」


弟さんは着ていたパーカーのポケットからスマホを取り出して、指をスライドさせると画面を見せてきた。


その画面を見てひゅ、と息を飲む。


そこには里奈が泣きそうになりながら、ソファに座っている姿だった。その隣には、里奈ぐらいの歳の男の子が座って里奈の肩に手を回していた。



「里奈ちゃんが俺たちの家にいるって分かってくれた?」


佐久間さんが私へと手を伸ばす。

そして、私の手を掴んだ。ギュッと力強く握られた手は痛みさえ伴うようなくらいで。


眉根を寄せ、佐久間さんを見ると薄らと口許を弛めた。


ゾッと背筋が凍り、身体が震える。



「紗奈ちゃんも、来てくれるよね?」


「…………」


その言葉に頷くしか、私には選択肢などなかった。

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