第27話

お願いだから私を巻き込まないで欲しい。

私の事なんて忘れて2人で言い合っていたらいいのに。


もぞもぞと柊くんの腕の中から逃れようとしていると、素早く横にきた真斗くんに身体を抱き締められてしまった。


そして真斗くんとは逆側に回った柊くんにも抱き締められられてしまう。


雁字搦めの状態に内心ため息をついた。



「何で直ぐに梓ちゃんは逃げようとするかなぁ〜」


「っ、く、苦し、」


ぎゅうぎゅうと抱き締める力が込められケホッと乾いた咳が出る。

逃げようとした訳じゃなく、少し離れたかっただけだったのに。


「ったくさっき逃げるなって言ったばかりなのに、バカだなぁ梓は。優しくしてやろうとしたけどやっぱ止めた。」


「……っ?!」


ただでさえ短い丈のスカートを捲られ、ギョッとする。

2人から下肢に視線を感じて、顔が熱くなった。



「や、やだっ」


慌ててスカートの裾を抑えようとする私の手を素早く取り、柊くんがクスクス笑いながら頬に口付けてきた。


「だーめ。僕も泣かせちゃったから優しくしてあげようとしたけど、懲りずに逃げようとしたこと怒ってるんだよ?」


「ち、違っ、」


逃げようとした訳じゃないっ。ブンブンと顔を横に振るけど、2人に取り合ってもらえない。


「梓が悪いんだろ」


「っ、やっ、違、違うのに……っ」


「梓ちゃんがいけないんだから諦めて」




楽しそうに笑う2人に止まった筈の涙がじわりと浮かぶ。

また2人同時に抱かれてしまう事が決定している。



「梓、簡単に落ちるなよ?」


「梓ちゃんいっぱい感じさせてあげるね」



2人同時に囁かれ、ゾワッと背筋を凍らせる。

きっと今日も寝かせてもらえない。


これから起きる事にただただ涙を流すことしか出なかった。

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