第25話

「退け。ったく……梓がまさか俺らを押し退けるなんて思いもしなかったぜ。」


私に抱きついていた柊くんを退かせ、強引にも真斗くんが私を横抱きで抱え上げた。

突然身体が浮いたことに驚く。



「やっ、やだ、離し、」


軽くパニックになりながらも下ろしてもらおうとバダバタと暴れると、柊くんが私に軽くデコピンしてきた。


「っ!?」


予想もしていなかったデコピンに目を見開く。一瞬、何が起きたのか分からなくて目を瞬かせる私に柊くんは緩く笑みを浮かべた。



「暴れて落ちたりしたら怪我しちゃうでしょ?」


「梓を落とすなんてしねぇよ。」


「分からないでしょ」


ふんっと真斗くんがつまらなそうに鼻を鳴らす。確かに真斗くんにに抱き上げられているのに暴れたりしたら、怪我するのは私だ。


下ろしてくれる気は無さそうだし、ここは大人しくしていた方がいいだろう。

ギュッと着せられている服の前を握り締める。


スカートの丈が短いから、多分下着が見えている気がする……。

横抱きのまま歩く真斗くんと柊くんを見るけど、そこまで怒っていなさそうで少しだけ安堵した。



「っ、」


リビングに再び戻され、ソファーの上に下ろされる。慌てて身体を隠すように自分を抱きしめると真斗くんが舌打ちをした。


ビクッと肩を跳ねらせる私に真斗くんが眉根を寄せ、歪んだ笑みを浮かべた。



「で? コイツからならまだしも何で俺からも逃げたんだよ。」


「っそ、それは、」


監視カメラ事を教えてくれなかったし、真斗くんが一切私を信用していなかった事にショックだったからで。


「酷いなぁ。梓ちゃんはまた僕を嫌な思いさせたかったんだ? 僕の前から逃げ出したあの日のこと、トラウマになっているっていうのにね。」


「っ、柊くん、」


柊くんがはぁと冷たい瞳で私を見下ろす。さっきまでとは違う2人の雰囲気に身が竦む。

やっぱり怒ってる……。


で、もそれは2人が悪いからで……。



「わ、私は、」


「「……。」」


「っ……あ、その……ご、ごめんなさい……」



ちゃんとカメラの事もこの服を着せられたことも、制服を着せられるということも嫌だと言おうとしたのに。

2人からの冷たい視線の圧に言えなくて。


気がつけば謝っていた。



「梓は何に謝ってるんだ? ん?」


「そうだよ。梓ちゃんが謝る理由は何かな?」


「あ……」


謝れば済むと思ったのに。2人はそう簡単に許すつもりは無かったらしい。



「ふ、2人から逃げたことも、押し退けてしまったことも……ご、ごめんなさい……」


震える声で謝る私に柊くんはくつりと喉を鳴らした。



「はは。泣いちゃった。可愛なぁ梓ちゃんは。ちょ〜と怒ったぐらいで泣いちゃうなんて」


「……っ」


柊くんの揶揄いにちょっとだなんて何処がだ、と言いたくなった。

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