第24話

開けても、開けなくてもどっちにしろろくな目に合わないだろう。

それが早いか遅いかで。


ドアを開けた方がいいのは分かってる。

でも怒っているであろう2人を相手するのは、怖くて……どうしても開けることが出来ない。



「はぁー……梓ぁ、早く開けろよ。俺は優しいから梓から開けるの待っててやってんだよ?」


「梓ちゃん開けて? 梓ちゃんから開けなくても入れる事ぐらい分かってるでしょう?」



「……ッ」


煽るように言われるけど、手が震えて動けない。

真斗くんがこの部屋を管理しているのだから、開けられない筈がない。

でも敢えて真斗くんも柊くんも私から開けることを望んでいる。


怖い……。

こんな事になるなら逃げなければ良かった。



「お、怒らない……?」


震えた声でそう聞くと、暫く沈黙して2人から怒ってない、と言われた。


沈黙が怖かったけど、何時までもこうしているわけにはいかない。



ゆっくりと扉を開けると、ぐっと手首を強く引っ張られた。



「きゃっ!?」


いきなりの事に驚いて悲鳴を上げると、柊くんに抱きすくめられた。

ぎゅうぎゅうと強く抱き締められ、息苦しさに藻掻く。



「僕の前から逃げようとするのはもう駄目だよ」


「や、苦し、」



お願いだから離して欲しい。


柊くんに必死に訴えているのに、柊くんは全く力を緩めようとしてくれなかった。

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