第23話

特別に何かある、というわけでなさそうで。

至って普通の部屋で、本棚がいくつかある。


真斗くんが読んでいた本、なのだろうか……。

でも、ただの本なら何でこの部屋に入るのを許可しなかったんだろう……。


そんなの気にしている場合じゃないのに。

バクバクとなる心臓が痛みさえ感じる。


この部屋に逃げたことなんてお見通しだろうに、何で2人は来ないの……?

嫌な予感に呼吸が荒くなっていく。


今更ながら家の中とはいえ、2人から逃げてしまったことに後悔していると。



「梓」


「ーーっ!!!」


ドア越しに聴こえた真斗くんの声にドキンっと心臓が跳ね、息を呑んだ。

やけに優しい声に身体が震える。



「何でこの部屋に入るかなぁ。あれ程言ったのに。」


「っ、そ、れは……その、」


咄嗟に逃げてしまったし、もうこの部屋に入ってしまったのだからどうしようもない。



「まぁ、いいよ。ここ、開けろ」


「梓ちゃん早く開けて? 怖い思いするの嫌でしょう?」



やっぱり柊くんも居るらしい。

怖い思いは常にしている。今更だ。


開けないといけないのに、身がすくんで立つことが出来そうにない。


「お、怒ってるでしょう……」


悪意はないとはいえ2人を突き飛ばしたのだから、声は怒っていないけど……きっと怒ってる筈だ。

ここを開けたらどうなるかなんて分かっている。

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