第21話

「梓のこと信用してなかったわけじゃねぇよ? でも、何かあった時に直ぐに気付けるようにしてただけだ」


「っ、な、んで言ってくれなかった……の?」



真斗くんの言う通りに私はこの家に居て。

外に出たくても真斗くんのことを思って、約束を守ってきていたというのに。


それが、まさか監視カメラを設置していたなんて思ってもいなくて。


カメラがあると言われて分かったとしても、見渡しても何処にそのカメラ自体があるのか分からない今、とても不安に感じてしまう。


柊くんは直ぐに気付いたみたいだけど、なんで柊くんも教えてくれなかったんだろう。



「なんで言う必要があんだよ」


真斗くんが鼻で笑って、私の顎を掴んだ。馬鹿にしたような真斗くんの態度に心が傷付く。



「だ、だって、カメラで監視されていたと思うと……真斗くんだって嫌な気持ちになるでしょう?」


「梓は嫌だったってこと?」


「それはっ!」



真斗くんがイラついたように聞き返してくるので、堪らずそうだと言いそうになって口を噤んだ。



「はは、そのまま喧嘩してさぁ、別れてくれたら万々歳だよねぇ。ってことで、梓ちゃんはどうやら君に失望したみたいだから別れてくれないかな?」


「阿呆かよ。誰が別れるって? 例え梓が俺と別れたがったとしても逃がすわけないだろ」


「だってさ、梓ちゃん。」



柊くんが場を乱すように、悪戯気にクスクスと笑う。


なんで笑っていられるの?

私はこんなにも嫌な気分になっているというのに。

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