第19話

柊くんを怯えつつ見つめると、ふふと笑われるだけで答えてくれなかった。



「梓ちゃんはほんと可愛いなぁ。アイツと共有しているのは嫌だけど、まぁいずれは僕だけのものになるしいいか。」


「柊くん……」



ぎゅうと強く抱き締めながら柊くんが頭に頬にと口付けてくる。いずれも何も私たちは終わった筈の関係なのに……。

でもかといって真斗くんとこのまま幸せになれるかといったら……幸せになれる自信などない。


柊くんと関係を続けても一方の想いが強くなり過ぎてしまったら、歪んでいくだけで。


私が1番選ばなければならないのはきっと、この2人から逃げること。

その為にはこの檻のような家から出ないといけないけど、2人から逃げられることなどゼロに近い。


どうしたらいいの……?


鬱蒼としたため息を吐くと、真斗くんが上機嫌にも鼻歌を歌いながら部屋に戻ってきた。



「梓お待たせ」


「…………ぇ」


真斗くんが持ってきた服に掠れた声が出た。

これを着るの……?




「見ててやるから早くしろよ?」


「梓ちゃん早く見せて?」



真斗くんが私に手渡し、口端を吊り上げる。柊くんも私を立たせて有無を言わせない笑顔で言ってきた。


思わず泣きそうになる。



「い、いや」


「嫌じゃねぇんだよ。梓に拒否権なんてあるわけないだろ」


「そうだよ梓ちゃん。浮気性の梓ちゃんには拒否権なんて無いよ」


「っ」


拒絶した途端に2人が冷たい笑顔へと表情を変えた。狂気すら感じる2人の暗い瞳にゾワッと肌が粟立つ。


怖くて目線を下げると持っている服が視界に映る。


真斗くんがこんなのを買っていたのを知らなかった。こうなる前まで着せられたことなどなかったのに……。

どうして今になってなんだろう。

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