元カレが私を拘束して離さない

第15話

柊×梓



「あーずさ」


「っ、柊くん……」


ソファーでウトウトとしていると、不意に頬を軽く叩かれた。ハッとして見ると貼り付けた笑みを浮かべた柊くんが目の前にいた。


「なにソレ。」


視線を手首へと向けて、小さく首を傾げた。柊くんの艶やかな髪がサラりと揺れる。

柊くんの目線を追うように自分の手首を見下ろし、息が詰まるような感覚になる。


「これは、真斗くんが……」


私の手首には手錠が嵌められていて鎖が伸びていた。こんなの付けてるのに眠ってしまいそうだったことに驚く。

それ程、この現状を受け止めたくなくて現実逃避をしたかったのかもしれない。



「へぇ。いい趣味してんだね、梓ちゃんの浮気相手は。」


「っ!」


柊くんが冷たい声で呟き、思わず身体を強ばらせる。柊くんは真斗くんのことを浮気相手というけど違うのに。


今私が好きなのは真斗くんで、柊くんのことは元カレとしか思っていない。

なのに、柊くんの中では私と未だに付き合っていて、私が浮気しているってことになっているらしい。



柊くんから逃げ出したあの時より話が通じなくなってしまったことに胸が痛い。


私が柊くんを壊してしまったのだろうか。



「それに梓ちゃんも梓ちゃんだよ。そんなの付けられて抵抗するどころか受け止めてるなんて。そんなに拘束されるのが好きだったのなら、最初からしてやれば良かったなぁ」


柊くんが私の隣に座り、手錠を嵌められている両手首を握る。

責めるような柊くんの声と瞳に思わず息を呑む。


受け止めたくてしている訳じゃない。

真斗くんを狂わせてしまったのが私だから、少しでも真斗くんが落ち着けばと思って……。

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