第10話
元カレと今カレが居るという事に、おかしくなりそうだ。
「てめぇはフラれたんだ。いい加減にしろよ」
「キミこそ僕と梓ちゃんの土台になってるだけだって分かんないの?」
「……殺す」
「は、はは。やれるわけないよね。僕だって梓ちゃんに触れた事が許せないんだよ」
真斗くんが柊くんの首に刃を当てたかと思うと、軽く切れたのかスっと血が流れた。
眼前で血が流れるのを見てしまい、ガタガタと恐怖で震えてしまう。
「梓?」
「梓ちゃん?」
様子がおかしいことに気付いたのか2人に名前を呼ばれ、右手を柊くんに、左手を真斗くんに掴まれる。
「わ、私、」
どうしよう。2人が怖くて言葉が出ない。
「なんだよその顔。コイツにそんな怯えた顔を向けるならまだしも俺にまでなんて酷ぇんじゃねぇの? それに梓さぁ、何でコイツを部屋に招き入れたの。浮気か?」
「ち、違っ」
真斗くんが舌打ちをして苛立ったように問いをかけてきて、ビクリとしてしまう。
そんな態度とってはいけなかったと後悔したのは直ぐで。
「は、はは。そうだよな。梓は俺だけじゃ物足りないからコイツをこの部屋に入れたんだよな」
「梓ちゃんはやっぱり浮気性だったんだ。あんなにも梓ちゃんだけを愛して愛して気が狂いそうなくらい愛してるというのに、足りなかったんだ」
「俺の言うこと聞いてずっと部屋に居てくれてたと思ったけど違ったんだな。俺が仕事行ってる間、コイツと浮気してたなんて」
ぶわりと焦燥感で冷や汗が出る。2人から尋常ではない程の怒りをぶつけられ胸がギュッと締め付けられるような感覚に陥る。
2人にきちんと誤解を解かないといけないのに、声が出てくれない。
何で、何でこんなことになってるのか。私が悪いのか、分からなくなっていく。
「梓ちゃん酷いよ。この僕の愛を信じてくれなかったなんて」
「あぁ本当酷い。俺はお前だけを一心に愛してるっていうのに。お前は俺だけじゃなかったんだな」
「ひっ、」
柊くんと真斗くんが呪詛のように呟く。
ーーー逃げたい。
だなんて、叶うはずも無いのにそう思ってしまった時には2人の手が私の身体へと伸ばされていた。
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