第9話
まさか、私を抱こうとしている……?
そんな、信じられない気持ちで柊くんを見つめるけど、彼の目に本気が入っていることがわかり慌てた。
元カレに抱かれる訳にはいかない。
以前は彼と身体を重ねていたとはいえ、今は私には彼氏がいる。
それだけは絶対に駄目だ。
「止めてっ」
「梓ちゃんに浮気されて、僕が傷付いたって言ったよね。その身体は僕だけのものなのにってさっき言ったばかりだけど」
「私と柊くんは別れてるの、私はもう柊くんの事は愛していない。私には真斗くんがいて、彼のことをーー」
「嘘だ。梓ちゃんが僕のことを愛していないなんて言うわけがないよ。梓ちゃんを誑かしたのはそいつだね。可哀想な梓ちゃん。そんな奴に騙されて。ねぇ、そんな屑は生きている価値が無いよね」
「っ、」
柊くんが怖い。全く私の言葉を聞こうとしない彼に、どうしたらいいの。
このままでは、また私は……ーー。
「ーーてめぇ殺すぞ」
「……」
「ま、真斗くんっ!?」
ドスの効いた声にビクッとした。いつの間に居たのか。
柊くんの首に、折りたたみ式の包丁を当て怒りに顔を歪めた真斗くんがそこにはいた。
驚く私とは逆に、柊くんは一切表情を変えることなく更に真斗くんの方を一切気にかけるわけでもなく一心の私を見つめていた。
「その汚ぇ手を離せよ。俺の梓に何しようとしてたんだ、あぁ? キチガイ野郎」
「はぁ。そっちこそ僕の大事な梓ちゃんの前で汚い言葉を使わないでくれるかな。僕の梓ちゃんが穢れるだろ」
「てめぇ人の彼女の名前を呼ぶんじゃねぇよ」
「何を言ってるの。梓ちゃんは僕の彼女で、妻になる人だよ」
「はっ。これだから頭のおかしい奴は。てめぇは梓に見捨てられたんだよ。別れたっていうのに彼氏気取りしてんなよ」
「君こそ勘違いしてるんじゃないの。梓ちゃんは僕を試したくて逃げ出しただけだよ。そんなの試さなくても僕は君を愛してるのに」
言い合う2に言葉を挟めるわけもなくて。この状況に頭がガンガンと痛くなるよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます