第8話

柊くんは私の事を愛してくれている。


私も柊くんの事を愛していた。


だけど、段々と柊くんはおかしくなっていった。私が柊くん以外の男の子と喋っただけで嫉妬して。小さな嫉妬から、エスカレートしていった。


誰と、何を、何処でから問い詰め、柊くんの傍から離れようと決意した時には私は恐怖症で外に出ることが出来なくなってしまっていた。


毎日、柊くんに逐一自分の行動を報告して、何をするのも柊くんの許可を取らないと許して貰えなくなっていって。


あんなに柊くんの事が大好きで、愛していたというのに。ーー恐怖しか感じなくなって。


私のせいで柊くんも壊れてしまったのかと思ったら、このままでは居られないと思った。


だから、柊くんに別れを告げ必死に彼の元から逃げたんだ。

お互いの為に。


柊くんに戻ってもらいたくて。私以外の人と一緒になって、幸せな姿をみせてもらいたくて。





なのに。



ーーどうして、こうなってしまったのか。



「やっ、柊くんっ、止め、」


酸素を奪う激しいキスに、必死に抗いながら柊くんに何とか止めてもらおうと訴えようとするのに。


思考を遮るようにキスで私をおかしくしていく。私には今愛している真斗くんが居るというのに。


何でこんな元カレと、このマンションで2人きりでキスをしてしまっているのだろう。


軽くパニックを起こし、目尻に涙が浮かんでいく。



「はぁ、は、梓ちゃんに選ばせてあげる」


「っ、は、はっ、……?」


軽く呼吸を乱した柊くんが口端を吊り上げながら、至近距離で言った。

涙で滲む視界の中、その言葉の意味の心理に首を傾けた。


「最初は激しくがいいか、それとも優しくがいいか」


「っ、柊くん!?」


柊くんが私の着ている服に手をかけたかと思うと、直にお腹に触れてきた手に声を上げた。


言葉の意味を理解し、血の気が引く。

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