第7話

バンっと顔の脇に手を当てた柊くんに、囲まれてしまった。

足の間にぐっと割り込む長い足に、逃げられないように覆い被さるように柊くんが身を屈めた。


「酷くしちゃっていいよね? 梓ちゃんにズタズタに傷付けるられたんだから、それ相応の仕返しをしてあげないと。あぁ、でも安心してね。梓ちゃんが他のやつと浮気しようと、僕は絶対に見捨てたりしないから」


「しゅ、柊くん、話を聞いて!」


「うるさいよ。もう黙って」


「え、あ、んんんっ、んぅ、あっ」


顎を掴まれたかと思うと、強く押し付けられた唇が強引にも私の口内を犯していく。

ぐちゅ、くちゅ、と卑猥な水音を鳴り響かせ、絡められる舌に身体が震えていく。


忘れられたと思っていた。

柊くんとの情事は。だけど、この浅ましい身体は何一つ忘れられていなかったことに失望した。


「は、はは。梓ちゃんは相変わらず僕とのキスが好きなんだ。安心した」


「や、あ、ち、違っ、」


指摘され、慌てて首を横に振るけどそんなの無駄な行為で。ふっと歪んだ笑みを浮かべる柊くんには全て見透かされてしまっているようだ。


ーー柊くんと付き合っている時、私は柊くんとのキスが1番好きだった。

この人と想いあえていることが嬉しくて。


恋人になれたことが幸せで。

キスをしてくれる度に、私は柊くんと分かり合えていると思っていた。



だけど、それは思い違いだった。

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