第6話

***


無理やり脅され、案内するしか無かった。

今の状況はハッキリ言って絶望としか言いようがない。


せっかく1人で外に出られたのに。


後はもう帰るだけ、という時にこんな事になるなんて全く思いもしなかった。



「へぇ。まぁ、調査してたから知ってたけど本当に梓ちゃんはここでこんな男と暮らしてるんだね」


ペラっと、眼前に突き出された書類には真斗くんの写真と共にビッシリと細かく書かれている文字があった。


「な、なに……」


震える手でその書類を取ろうとするけど、フンと鼻を鳴らした柊くんが阻止をしてきた。


「この2年間必死に梓ちゃんを探していたというのに、こんな奴と浮気してたなんて到底許せる事じゃないよね」


「う、浮気では無いよ。それに、」


もう柊くんの前から消える時にはっきり伝えた筈だ。

これから先一緒に居ることは無理だと。別れると。


だから、柊くんに居場所を知られないように一切お母さんにも連絡を取らず、1人でこの地域に移り住んだというのに。



全て水の泡だ。


「ねぇ、アイツとはセックスした?」


「っ!」


直接的な言葉を吐く柊くんに、驚愕する。あの柊くんがそんな事を言うなんて信じられない。


「へぇ。したんだ。僕だけしか触れてはいけない身体を、他のやつに触らせたんだ?」


「やっ、柊く、」


「あぁ。どうしようかな。どうしよう。梓ちゃんは僕を傷付けるのが上手だよ。あぁほんと、酷いなぁ」


「ひっ、」


柊くんから距離を取ろうと後退りするけど、部屋の中だなんてたかが知れている。

直ぐに背中に当たった壁の感触に、あ、と思った時には遅くて。

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