第24話

直ぐ近くにあるお父さんの整った顔。

私を一心に見つめるその瞳とかち合い、身動きが取れなくなる。



そっと離れた唇。お父さんの唇を思わず見てしまう。

今、キスをされた……?


「舞ちゃん初めてだろう?」


クスリと笑ったお父さんが私の唇をそっと撫でる。

確信を持っているお父さんに、顔が熱くなった。


確かに初めてだった。

ファーストキスは好きな人と、と思っていたのにお父さんに奪われるなんて。



「な、なんで、お父さんはお母さんを……好きなんじゃ……」


こんなの嫌だ。

ぶわりと涙が溢れ出る。


せっかくお母さんが幸せになれると思っていたのに。

なんで……。

ショックで頭がガンと打ち付けられたような痛みが走る。



「舞ちゃんのお母さんと契約したんだ」


「け、いやく……?」


声が震えてしまっていた。


「舞ちゃんを私にくれるってね」


「う、嘘……お母さんがそんな事するわけないっ」



お父さんがうっそりと笑うけど、そんなの絶対に違う。

お母さんとずっと一緒にいたのに、お母さんが私を手放すわけがない……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る