第23話

慌てて抵抗しようとした時にはもう遅かった。


ーードサッ


「っ!」


ベッドに押し倒されてしまい、サァッと青ざめる。

なんで私、押し倒されているの?


必死に起き上がろうとするけどお父さんが体重を掛けるように覆いかぶさってきて叶わない。


心臓がバクバクと早鐘を打ち、身体が震えてしまう。

お父さんの瞳がまるで今にも獲物に食らいつく獣のようで怖かった。


「い、いやだ、」


そんな、まさか。

これは悪夢だ。こんなの嘘だといって。

冗談だって。


お父さんはお母さんを愛してるはずで。

だから、一緒になったはずで。


お母さんの娘である私に対して向ける視線じゃない。


血が繋がっていないけど、私はお父さんにとって娘なのに……。


そんなはずないと思いたいのに、嫌な想像ばかりしてしまう。

最初お父さんと出会った時から感じていた不安感が、どうしても膨らんで小さくならない。




「舞ちゃん愛してるよ」


「っ!?」


お父さんの顔が近付いてそっと耳元で囁かれた言葉に身体が強ばった瞬間。

唇に感じた熱に目を大きく見開いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る