第20話



「に、逃げてきちゃった……」


バタンと部屋のドアを閉じてドアを背に、ずるずるとしゃがみこむ。

心臓がバクバクと早鐘を打っていた。


お父さん、きっと変に思ったよね……。更に傷つけてしまったかもしれない。


せっかく仲良くしようとしているのに。


自分がつくづく嫌になる。


「お母さん……」


仲良くしなさい、と言われていたのに。まだその言葉は守れそうになかった。



部屋の中でぼうとしてしまっていると、ドアをノックする音がしてハッとした。


「舞ちゃん」


「っ! お、お父さん……」


ドクッと心臓が鼓動する。

冷や汗が出た。


まさかこんなに早くに私の所へ来るとは思わなかった。

飽きれてしまったと思ってたのに……。



「ちゃんと話がしたいんだ。せっかくの休みだから、時間はたっぷりあるだろう?」


「……あ」


確かに今日、明日って学校は休みだった。

お父さんも休みで。

どちらかが出かけようとしない限り、この家では2人きりだった。


特に友達と遊ぶ約束はしていないけど……今では約束しておけば良かったと後悔する。

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