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第18話

「舞ちゃん」



憂鬱な気分で朝ごはんを食べていると、向かい合わせにいたお父さんが声を掛けてきた。


箸を止め、チラリとお父さんを見ると口元に笑みを浮かべている。


だけど瞳は笑っていない。

異様なお父さんの視線にゾッとして思わず、目を伏せてしまった。


ーーお母さんが入院してから、お父さんと2人きりの生活が始まった。


未だにぎこちなく接してしまうけど、それでも努力してお父さんに対して普通にしようと思ってはいるけど。



時々、私を見つめるお父さんの視線が怖いと感じる時がある。


こんな風に思っちゃ駄目なのに。



「っ!!」


お父さんの手が伸びてきて私の頬を撫でた瞬間、感じたのは不快感で。

肌が粟立つ。


ビクッと身体を大きく震わす。


「やっ!!」


お父さんの手を振り払ってしまう。パシン、と音が鳴り響き、顔を青ざめる。



「あ…ご、ごめんなさ、」


慌てて謝ろうとしたけど、お父さんの表情を見て身体が強ばってしまった。


「大丈夫だよ。驚かしてすまないね」


ニッコリと微笑んでいるけど瞳は冷たかった。

ひゅ、と息を呑む。


振り払った筈の手が再び私の頬を撫でる。

止めて…触らないで。

そう言いたいのに声が出ない。


「舞ちゃん」


お父さんの声が瞳が。


私を捕らえる。


冷や汗が背中を伝う。



「ふふ。そんな怯えた顔をしないでよ」


「っ……」


お父さんがふっと表情を緩めて、困ったように眉根を下げた。

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