第14話

なんで着いて行ったら駄目なの?


お母さんが心配なのに。



「……舞。悪いけど、お願いね。私は大丈夫だから」


「お母さん……」



お母さんにまでそう言われてしまったら嫌だなんて言えない。


渋々頷くと、お父さんからポンと頭を撫でられた。



「お母さんは大丈夫だよ。そんなに心配しないで。直ぐに戻ってくるから」


「……はい……あの、お母さんをお願いします」


「勿論。任せて」



私の目線に合わせるように腰を屈んだお父さんはニコリと笑うと、車へと乗り込んだ。


お母さんの方を見ると、やっぱり具合悪いのを我慢していたのか息が苦しそうだった。



「お母さん……」


車が発進し、姿が見えなくなるまで見送る。


早く、お母さんが良くなるといいな。

心配だけど、お父さんに任せておけば大丈夫だよね。



心のどこかに不安を抱えつつ、家へと戻るしかなかった。




▫️




あれからどのくらい経ったのだろう。

うつらうつらとしていると、不意に玄関の開く音がした。



ハッと目が覚めて慌てて駆け寄る。



「お母さん!?」


「っ!」



立っていたのはお父さんだけで。驚いたように切れ長の瞳を大きく見開いていた。



「お、お母さんは? 何か病気ですか!?」


「舞ちゃんごめんね。ずっと不安だったね。」



お父さんがふぅと息を吐いて、私の頭を撫でる。


やっぱり後ろを見てもお母さんはいない。

何か深刻な状態だったんじゃないかって思ったらいても立ってもいられなかった。

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