第11話

お父さんは心配じゃないの?

なんだか心配そうにするどころか全く心配していない様子に不満を持つ。


不満な顔が出てしまっていたのか、お父さんがクスリと小さく笑うとグリグリと頭を撫でられた。



「舞里さんはまだ寝ているのかい?」


「うん」


「そうか。大丈夫だろうけど、まぁ心配だからね。様子見てくるよ」


「! もし具合悪そうだったら病院に連れて行ってくれますか?」


「勿論。舞ちゃんの大切な……お母さんだからね。」



何となく引っかかる言い方だけど、お母さんの様子を見に行ってくれるようで安心した。

これで具合が駄目そうだったら病院に連れて行ってくれるかもしれないのだから。


お父さんが2階に上がっていく姿を見て、少しだけ気持ちが晴れたのだった。






【蓮也side】



2階に上がりきって、寝室を覗くとそこには眠りきっている舞里さんがいた。



「…………」


灯りをつけずじっとその姿を見下ろす。

昼間に会った時はそんなに顔色が悪そうじゃなかったが……。


なるほど。

舞ちゃんがあんなに心配するのも頷ける。



「どうするかな」


病院に連れて行くか。行かないか。

病院に連れて行ってあげたら舞ちゃんは安心して、喜ぶんだろうけど。


「はぁ。まずいな」


自分でも思っていたより心が狭いみたいだ。舞ちゃんにあんなにも想われて心配してもらえるなんて羨ましい。


嫉妬なんて年甲斐もなくしてしまった。


「…………」


自分の心の狭さに顔を覆って失笑していると、動く気配を感じた。



「……蓮也さん」


「あぁ。起きたのかい」


「えぇ。舞は大丈夫かしら」


「凄く心配していたよ。羨ましい程に、ね」


「ふふ。あの子の母親ですから。」


体を起こしてクスクスと笑う舞里さんに思わず目を細める。

やっぱり舞ちゃんの母親だけあって似ている。

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