第10話

▫️



あれからちょくちょくお母さんの様子を見に行くけど、眠ったままで。

症状が悪化する様子はないけど、顔色はやっぱり悪そうだった。


リビングでどうするか悩んでいると、玄関が開く音がした。



「ただいま」


「っ、お父さん!」


お父さんの声に慌てて駆け寄ると、驚いたのか目を少し丸くしてそして嬉しそうに微笑んだ。



「舞ちゃんが俺の帰りをそんなに待っていてくれてただなんて嬉しいな。そんなに慌ててどうしたんだい?」


「あ、その……お母さんが具合悪いって事は知ってますよね?」


「あぁ。職場で聞いたからね。朝はそんな感じなかったんだけどね。」


「横になって休んではいるんですけど、心配で……」



やっぱり病院に行ってもらいたくて。お父さんが言ってくれればきっとお母さんも行くだろうから。

期待してお父さんを見ると、お父さんは何故か苦笑いをした。


ポン、と頭を撫でてきたかと思うとお父さんは目線を合わせるように腰を屈んだ。



「大丈夫だよ。舞里さんは今日1日休めばよくなるから。そんな泣きそうな顔をしないで、ね?」


「っ……で、も」


「舞ちゃんは分からなかったかもしれないけど、前も具合悪くなったことあったんだ。その時も職場で休んだら大丈夫になったからきっと今回も大丈夫だよ」


「前も……?」


そんな事分からなかった。

お母さんはきっと私に心配かけまいと内緒にしていてくれたんだろうけど、前から不調があったなんてやっぱり心配だ。

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