第8話

▫️



ご飯はとても美味しかった。あんなに美味しい料理を食べるのはもしかしたら初めてかもしれない。



「……あの、ご馳走様でした。」


「舞ちゃんとは家族になったんだから、ご馳走様なんていいのに」



クスクスと笑いながら、助席に座る私の頭をぽんぽんと撫でてくる。


本当のお父さんの記憶があまりないからか、分からないけどお父さんはこんなにも触れてくるものなのだろうか。


何となく違和感を覚えつつ、されるがままになっているしかない。



「今度は舞ちゃんの好きなカフェでも行こうか。」


「え?」


「甘いもの、好きだろう? 特にケーキだとミルクレープが好きなんだよね。だから次はミルクレープが美味しいカフェに行こう」


「……は、い……」



確かに私はケーキだとミルクレープが特に好きだけど……。そこまでお母さんはこの人にお話をしたのだろうか。


今度は2人きりじゃなくてお母さんも一緒がいい、だなんて臆病な私には言う勇気が無くて。


ただ頷くことしか出来ない。


せっかく美味しいご飯を食べれて少しは心が軽くなったのに、また重くなったような……。



無意識に声にならないため息をつくと、お父さんが何故かおかしそうに笑ったよつな気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る