第7話

「お待たせしました」



場の雰囲気に耐えきれず、意味もなく指を握り締めると不意に割り込んだ声にハッとする。


どうやら料理が出来たらしく、持ってきてくれたらしい。



「ありがとう。」


「ゆっくり楽しんで。」


お父さんが私から視線を逸らしてくれた事にホッと安堵する。


目の前に置かれた料理はとても美味しそうで。お肉にすると言った通り、ステーキが置かれ凄く豪華だった。


とても高級そうなそれに金額が一体幾らなのかと内心ビビると、ウェイターでお父さんの友人が私を見つめている事に気づく。



「っ?」


何で見てくるのか分からず、戸惑うとウェイターさんはニッコリ笑って。

そっと屈んできた。


「蓮也の事、宜しくね。とても大切な親友なんだ。」


「え!?」


目を見開いて堪らず声を上げると、さウェイターんはすぐに立ち去ってしまった。



「どうしたんだい? 何か言われたようだけど」


お父さんが不思議そうな顔をして見てくる。慌てて首を横に振った。


なんであの人がそんな事を言うのか分からない。

でも、きっとお父さんと仲良くしてという事なんだろう。



……お母さんもあの人もそう簡単に言わないで欲しいのに。



「そう? 何か変なこと言われたりしなかった?」


「い、いえ。」


お父さんに何て言えばいいか分からない。

モゴモゴしてしまっていると、お父さんはそれ以上聞いてくる事を止めてくれたのか「さ、食べよう」と言ってくれた。

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