第6話

「そんな緊張しなくて大丈夫だよ。舞ちゃんと仲良くなりたくてご飯に誘ったのだから」



お父さんが私に笑いかける。

仲良く……。何度も繰り返されると余計に萎縮してしまう。


お母さんも仲良くするようにと言っていたけど、仲良くなるにはまだまだ時間が掛かりそうだった。


私は人見知りだって自覚しているし、そう簡単に性格は変えられない。



お父さんの言葉にますます圧がかかったみたいな気がして、緊張感が解けない。



「もしかして早まってしまったかな。」


「え……?」


「舞ちゃんと早く仲良くなりたいあまり、舞ちゃんの気持ちをよく考えられていなかったみたいだ。すまなかったね。」


「っ……」



お父さんが悲しそうに眉根を下げて笑う姿を見て慌ててしまう。

お父さんを悲しませるつもりは全くなかった。


ただ私が中々慣れないのが悪いのに。


私のために住む家もお母さんと一緒に住んでいた家に、お父さんが来てくれたということはお母さんから聞いている。


全て私のために譲歩してくれているのだと、改めて分かって申し訳なさが込み上げる。



「私が人見知りなのがいけないんです。お父さんは何も悪くないです」


「優しいね舞ちゃんは」


「優しい、わけじゃ」



無いのに……。


お父さんが表情を緩ませて少し笑う。

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