第5話
着いた場所は見るからに高級そうなお店で。高校生である私がとても入るようなお店には思えなかった。
ご飯食べに行くと言われ、制服から急いで着替えたもののカジュアルな格好をしてしまったのに、入ってしまっていいのか。
躊躇う私にお父さんは、背中を支えて先を進ませてきた。
「大丈夫だよ。ここはね、俺の友人の店なんだ。今日は貸切にしてもらったから人目を気にしなくていい」
「っ、で、でも」
貸切だなんて余計に入りづらくなってしまった。幾らお父さんの友人のお店だとしても、絶対に金額は高いに決まっている。
焦る私とは裏腹にお父さんは何故か愉しそうに笑うだけで。
中々足を進められない私の腕を掴むと、お店の中へと誘導されてしまった。
「いらっしゃい、待ってたよ」
出迎えてくれたのは白いシャツに黒いジャケットを羽織ったウェイターで。お父さんを見て口許を小さく緩め、店の奥へと案内してくれた。
「悪いね。今日は貸切にしてもらっちゃって。」
「親友の頼みだ。断るわけないだろ。それよりも……その子か。」
「うん。可愛いだろう?」
お父さんの友人とあって和やかにお父さんと話しているかと思えばじっと見下ろされ、居心地の悪さを感じる。
挙動不審になりながらもお店の中をキョロキョロと見渡していると、2人から笑われてしまった。
「はは。蓮也が気に入るわけだ。」
席に座るよう促され、腰を下ろすとお父さんの友人であるウェイターの方がそう呟いた。
気に入る……?
お父さんが……?
まだ私とお父さんは出会ってそんなに経っていないのに……。
戸惑うことしか出来ないでいると、お父さんは事前に頼むものを決めていたのか「あれを」と言うと、ウェイターさんは頭を下げてこの場から去っていった。
またお父さんと2人きりになったことに目を何処に向ければいいのか分からず俯いてしまう。
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