第4話
「はい乗って?」
「……、」
お父さんの所有する車の助っ席に座るよう促され、戸惑いつつも従うと何故か頭を撫でられた。
「っ?」
触れられた事にビクッとするとクスッと小さく笑って、ドアが閉められる。
ーーバタン。
やけにドアの閉められた音が大きく聞こえたのはきっと気の所為だ。
運転席に回り込み、シートベルトを締めたお父さんを見習って自分もシートベルトを締めると、ゆっくりと走行した。
念の為にお母さんにLINEを入れておいて、携帯を鞄に仕舞うとお父さんが「何食べたい?」と聞いてきた。
正直、お父さんと2人きりで食べることに食欲が湧かなくて。
何が食べたいとか思いつかない。
「……食べることは好きなので、何でも大丈夫です」
「ふふ。嘘だよね。舞ちゃんは魚が苦手でしょう?」
「え?!」
「魚の臭いが苦手なんだよね。」
赤信号で停まった時、私の方を見ながら言われた言葉に驚いて固まる。
確かに魚は苦手だった。青魚は特に臭いがキツく食べるのが苦手だった。
でも、なんでお父さんがそんな事を知っているのだろう。
お母さんにも迷惑を掛けたくなくて言ったことはない。
もしかしたらお母さんは気付いてたかもしれないけど。
じっと見つめ合うことしか出来ずにいると、お父さんはまたも小さく笑った。
「今日はお肉の美味しいお店に行こうか。」
パッと目を逸らし青信号になった所で車を発進させたお父さんに、思わず唇を噛み締める。
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