第3話

2人で食べに、か……。

身体が強ばってしまったのが分かったのか、お父さんは私の手を握り締めてきた。


最初に挨拶した時も思ったけど、お父さんの手は大きい。

握り締められてしまうと自ら解くことが不可能な錯覚に陥る。



「不安?」


「い、いえ。ごめんなさい……そのお父さんは4歳以降ずっと居なかったから……」


「お母さんとずっと2人きりだったんだよね。急にお父さんって言われても戸惑うのは仕方ない。舞ちゃんと早く仲良くなりたいから、君のお母さんにお願いしたんだ。」



眉根を下げ少しだけ悲しそうな顔をしたお父さんに、罪悪感が込み上げて慌てて口を開いた。



「変な態度取ってしまってごめんなさい。い、行きます」


「本当かい? 断られてしまったらどうしようかと思っていたから良かった」


「っ」



心から安堵したような顔に困りながらも頷く。


お母さんから連絡が無かったことが悲しかったからといって、この人を困らせてしまってはいけないよね。

私からお母さんに連絡を入れようと思い、手を離して欲しくてお父さんをじっと見つめる。



「あ、あの、手を……」


「あぁ。ごめんね。舞ちゃんの手が可愛いからつい」


ニコリと微笑みながら手を離してくれたけど、何故だか心がざわつく。

モヤモヤとした気持ちになるのは、どうしてだろう。

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