第7話

そもそもここの大学に決めたのは、私の意志じゃない。


大翔が選んで決めた。

女子大で短大。それが、私が大学に行ける条件で。


いつの間にかここの大学の受験が決まっていた。



私には他に行きたかった大学があったから、勝手に決められたことが許せなくて言い返したのだけど、その時に……酷い目にあったんだっけ。


嫌なことまで思い出してしまい、ため息をつく。



「優?」


「え、あ……ご、ごめん。大翔と知り合ったのは、中学の時だよ」


「中学の時から!? じゃあ付き合って長くない!?」


驚きながらも目を輝かせた葉月ちゃんに、苦笑いしながら頷く。



「え、待って。13歳からだから6年経つの!?」


「んー…そうなる、ね」



そっか。もうそんなに経ってるんだ。


私の意思なんて関係なくて、気付けば大翔と付き合っていることになっていた。


いくら私が否定しても、大翔は他の人まで巻き込んで付き合っていることにされてしまったから。



必死に違うと否定したときの他の人からの冷たい視線や、陰口を思い出す。

友達だと思っていた人から向けられた軽蔑の目に恐怖を感じた。


だから、1人でいいと思っていたんだよね……。もう、あんな辛い目にあいたくなかったから。



『ねぇ、これで分かったでしょ。優香には俺が、俺だけが必要なんだって』



追い込まれて、どうしたらいいのか分からなくて泣いていたとき、大翔が私を抱きしめてそう言ったことを忘れはしない。

あの時に、私は大翔から逃れようとするのを諦めたのだから。



「いいなぁ。その時から溺愛されてるんでしょう? 羨ましいわ」


「あ、はは。そ、それより葉月ちゃんだって彼氏とラブラブでしょう?」


「私の彼氏は、なんていうかドライなのよね。優の彼氏みたいに迎えなんて来てくれないし……」


「ふふ。でも、その人のこと好きなんだね」


「うっ…。そんなに分かりやすい?」



私と大翔の関係は葉月ちゃんが考えているような普通の恋人の関係ではない。


だけど、仲良くしてくれる葉月ちゃんに言えない。

だから微笑んだ。



ただただ笑った。

純粋に好きな人と付き合える葉月ちゃんが、眩しくて。

……羨ましかった。

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