束縛される日常【修正済み】

第6話

大学の講義室の一番後ろに席を降ろし、教材を広げると。

隣に見慣れたバッグが置かれた。



「優、おはよう」


「葉月ちゃん、おはよう」



美人でお洒落な葉月ちゃんは同じ学科で同じクラスだ。

人見知りで、更に大翔のこともあって一人でいた所を話しかけてくれた優しい人だ。


席は前に行くことが苦手だから、いつも一番後ろか後ろ側にしているけれど葉月ちゃんも後ろ側派らしく。

講義が同じときはいつも隣に座っている。



「葉月ちゃん眠そうだね」


「あ、ばれた?」



いつもよりタレ目で、欠伸を噛み締めている。

明らかに眠そうだ。



「優ソレ、ちゃんと隠した方がいいかもね」


「え?」



とん、と葉月ちゃんは私の首筋を指さした。

分からずに首を傾げ、自分の首を見ると。



「っ!?」


や、大翔! なんでこんな目立つところに痕を付けたの…。


赤い痕が幾つか付いていた。

慌てて縛っていた髪をほどき、なんとか隠す。


全然気づかなかった。

恥ずかしさに顔が赤くなったのが自分でも分かった。


ハッとして葉月ちゃんを見るとニヤニヤしている。



「いつも優のこと迎えにきてるもんねー。あんたの彼氏。」


「うん…。そうだよね……」


確かに一人で帰れた試しがない。

いつも大翔が迎えに来るし、大翔の方が遅い時は待ってるようだもの。



「イケメンだし、献身的だしいい人ゲットしたよね」


「……そう、かな」



葉月ちゃんの言葉に目線を逸らして呟く。

他の人から見たら、きっと私は幸せなんだろう。

でも、私は……ーー。



せっかく大翔から離れられる唯一の時間なのに、大翔とのことを考えたくない。

ふぅと小さく息を吐いた。



「それより、葉月ちゃんが眠そうなのってもしかして彼氏?」


「えっ! やだ、私言ったっけ?」


「ううん、最近楽しそうだしなんとなくそうかなって思って」


「そんな分かりやすかったか」



葉月ちゃんは照れたように、付き合っている彼氏とのことを教えてくれた。


いいなぁ。葉月ちゃん、その彼のこと大好きなんだなって良く分かる。

大人っぽい葉月ちゃんが可愛いくてつい微笑ましくなってしまう。




「もうっ私のことばかりじゃなくて、優と彼氏のこと教えてよ。言ってくれるまで待ってたのに中々話してくれないんだもん」


「え……?」


「え、じゃなくて。あんなかっこいい彼氏と何処で知り合ったのよ。ここ女子大だし、合コンでもして知り合ったの?」


わくわくした顔で聞いてくる葉月ちゃんに、苦笑いをした。

確かに私が通う大学は女子大だから、男の人と関わることなんて先生しかないものね。

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