第5話

まるで呪縛を言うかのように囁く声に目を瞑る。

自由ってなんだっけ。

その言葉の意味が分からなくなる。


莉奈にも、他の女生徒からも大翔と付き合っていることを羨ましがられるけれど。

出来るならば、他の人になりたい。


いつも思ってしまうことは、私以外の人のところにいけばいいのに…だなんて最低かもしれない。


更に強くなった抱擁に、唇を噛み締める。



「もう寝よう」


「うん……」


「今日は無理させてごめんね。今度は制御するようにするから」


「……うん。私もごめんなさい」



全部私が悪かったんだ。

最初から莉奈のお誘いを断っとけば、よかったのかもしれない。


諦めて大翔の横に身体を横たわる。

手を強く握りしめられて、寝ている時にも雁字搦めにされていることに気づく。


(大翔から逃げ出すことなんて、出来るわけないのに…)



「おやすみ」


「おやすみなさい…」



微笑んだ大翔を見たくなくて、もう忘れたくて。

寝てしまえば、この辛い現実から少しでも逃れられる気がして目を瞑った。





寝ている時だけが、私の唯一の”自由”だから……ーー。

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