第3話

ソファーに座った大翔と立ったままの私。

手を掴まれていて、動きたくても動けずにいると。

大翔が自分のジーパンのポケットから、スマホを取り出した。



「酷いよねー。あの後何回かかけたのに」


「え、あ……」



着信履歴を見せてきたので見ると、全部私にかけている。最初に出たあの通話から30分置きくらいにかけて、後半になると10分置きくらいにかけていることにゾッとする。


何回かけてきてたの…。自分のスマホを見るのが恐ろしくて余計に電源をいれたくなくなってしまった。



「いくら女友達と、だからって19時までとか許可出来ないんだけど? それに、俺言ったよね。早く帰ってきてねって」


「そ、それはごめんなさい…。でもね、久しぶりに親友と会ったから……」



なんで19時で帰ってきてこんなに責められなきゃいけないのだろう。いつも大学終わったら、遊びにも行かずにそのまま帰ってくるのに。

いつも大翔に言われるまま、友達の遊びの誘いだって断ってる。

それなのに……。


久しぶりに親友と会ったぐらいで何でこんなに責められなきゃいけなのいの?


言い返せない悔しさに唇を噛みしめる。

そんな私のことを嘲笑うかのように、大翔が掴んでいる手をぐっと引っ張った。


予想していなかった動きに直ぐに反応することができなく、そのまま大翔の胸元に顔がぶつかると思い目を瞑る。



「………?」



だけど、いつまでたっても痛みがこないことに不思議に思い、目を開くと。



「っ!?」



あと少しどちらかが動いてしまったら、直ぐに唇が重なってしまう距離で抱き寄せられていた。

思わずかぁと頬が熱くなるのが自分でも分かった。

じっと間近で見つめられ、いたたまれなくなって目を逸らす。微かに笑った声が聞こえたかと思うと。



「んぅっ!?」


「……」



噛み付くようにキスをされ、驚きで目を瞠る。

息苦しさに離れたいけど、後頭部に手を添えられ逃げ出すことが出来ず、更に口付けが深くなる。

直ぐに目を開けていられなくなり、強く目を瞑った。

苦しくて、生理的な涙が溢れる。



「んぅ、痛っ!」



舌に噛みつかれて、ビクッと身体が跳ねる。

そして漸く離れたと同時に必死に酸素を吸い込もうとする。

落ち着いてくると口の中が鉄の味がすることに気づく。


恐る恐る大翔を見ると。

唇が血で濡れていた。

舌を出してその血を舐め、目を細めたかと思うと。



「なぁ、痛かった?」

「え……」



唐突な問いに間抜けな声が出た。

『痛かった?』だなんて…そんなの、今も痛い。

噛んだのは大翔なのに、なんでそんなことを聞くのだろう。

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