キスで酔わせて、
第10話
ニコニコと満面の笑みで私の前に立つ累先輩に、思わず後退りしてしまいそうになる。
……何でしょうかその笑みは。
やけにキラキラオーラを放っている累先輩に恐怖しか抱かない。
このまま累先輩に捕まったらろくな目に合わなそうだ。
適度に距離を保ちつつ、累先輩の様子を伺ってみる。
訝しむ私とは裏腹に、累先輩は笑顔で両手を広げて私が来るのを待っていた。
「美羽ちゃんおいで?」
「い、嫌です」
やけに甘ったるい声を出す累先輩にぶんぶんと顔を横に振る。
今日は普通に学校がある日だ。
お互い制服に着替えて、学校に行ける準備もし終えたというのに。
何を企んでいるのだろうか。
「美羽ちゃん」
「っ!」
「おいで?」
有無を言わせないとばかりの声の圧に、恐る恐る累先輩の腕の中へと進む。
目が怖かった。瞳孔開いてたもの。凄く怖かった。
腕の中へと収まるとぎゅうぎゅうと強く抱き締められてしまう。
「く、苦し、」
いやいや苦しいんですけど。顔を累先輩の胸板に押し付けられて堪らず藻掻く。
常に引っ付いて抱き締めているのに更に距離を無くそうとする累先輩が末恐ろしい。
「はぁ……美羽ちゃんと今日は学校終わるまで会えないだろうから朝に充分補給しておかないとね」
累先輩が不満そうにそうもらす。
あぁ……。
そういえば累先輩が受験シーズンということもあってか、中々会いに来れないかもしれないって言っていたっけ。
累先輩もそれはしょっちゅう私の所に来てばかりは居られないだろう。
まぁ、累先輩は頭が良くて大学には推薦で行くからそこまで心配する必要も無いんだけど。
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