第6話

累先輩はムゥと唇を尖らせ不満そうに私を見つめている。

えぇ……もう本当困った人だ。


いつの間に見ていたのかとか、何故その場面を知っているのかとか聞きたいけど、それよりも累先輩の機嫌を宥めるのが先だよね。



「私には累先輩だけが必要なんですよ? 他の人なんてみてませんですし、それに累先輩以外の人に目を向ける余裕なんてありません」


「美羽ちゃん……」


ぎゅうっと自身から累先輩に抱きつくと、累先輩は縋り付くように抱き締め返してきた。

全く……私には累先輩だけだというのに。


何度言ったら分かってくれるのだろうか。



「ねぇ学校……」


「辞めませんよ。累先輩が卒業したと同時に、ですよね?」


累先輩が言いたいであろう言葉を遮りそう言うと、累先輩は不満そうな表情を浮かべつつも軽く口付けてきた。


相変わらず学校を辞めさせたがる累先輩に苦笑いしてしまう。



そんなに心配しなくても大丈夫なのに。

どれだけ信用無いのかとちょっぴり悲しい。



「担任が女だったら良かったのに……よりにもよって若い教師だから心配なんだよ」


「去年は女の先生だったから騒がなかったんですね」



先生ともあろう人が生徒に手を出すなんて有り得ないと思うんだけどなぁ。


確かに今回の担任の先生は結構距離感が近い気はするけど……。




「美羽ちゃんは自覚無いから困るんだよね」


「ん……?」


「はぁ……いっその事今からでもイメチェンしない? 分厚いメガネかけてあまり顔が見えないようにするとか」



「え゛。絶対嫌です」



いい方にイメチェンするならまだしも何故悪い方にしなきゃいけないのか。

メガネなんてする必要無いくらい視力はいい方なのだから、そんなの嫌に決まってる。

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