やっぱり累先輩は異常で

第5話

「る、累先輩……?」



無表情の累先輩に腕を引かれて、殆ど人が通らない暗い廊下に背中を押し付けられたかと思えば無表情の累先輩が私をじっと見下ろしていた。


多分、累先輩は怒っているのだろうけど……心当たりがない。


何故そんな冷たい空気を出しているのだろうか。


冷や汗が出て、内心慌ててしまう。



「美羽ちゃん」


「は、はい」


「教師とはいえ男なのに距離が近過ぎ。相手は男なんだからもっと距離取って」


「ーーーーは?」



累先輩の信じられない発言に思わず目を見開いた。そして間抜けな声が出てしまう。


教師……って担任の先生の事を言っているのだろうか。距離を取ってって。

流石にそれは無理があるのでは?


それに先生なのだから不安要素などないのに。


大人であり教師である人が生徒に何か思うことなど無いだろうし、累先輩が言うほど近い距離で話したわけじゃない。



「累先輩、相手は先生ですよ……? まさか、し、嫉妬したんですか?」


話した内容といっても先生にノートを回収してくれるよう頼まれただけだ。廊下側の1番前の席で、教室に入った時1番先に私がいるから頼まれただけだと思うし、そもそも座っていたというのに。


まさかね、と思いつつそう聞くと。

累先輩は小さく首を傾げてゆるりと口端を上げた。



「嫉妬するに決まってるでしょう? 内容がなんであれ美羽ちゃんが俺以外と話して笑顔を見せているのは凄く嫌なんだから」


「!」



思わず身体を強ばらせてしまう。

やっぱり累先輩の愛は凄く重くて、異常なのかもしれない。

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