第22話

「あ。そうだ。絢子、今日は学校行かなくていいよ」


「え……?」


朝起きると、尊くんがニッコリと微笑んでそう告げてきた。


昨夜に暴かれた身体は何も身に付けていなくて、先に起きていた尊くんに服を渡されて受け取った瞬間だった。


既に尊くんは制服姿になっていて、もう学校に行ける状態になっていた。


受け取った服は白いワンピースで。

制服じゃなことに、引き攣った声がもれる。



「な、何で……? 今日も学校ある……」


「うん。昨日に僕の絢子の身体に傷つけられただろう? また、絢子の身体に僕以外が付けた傷が出来ても嫌だからさ、今日は休んでもらおうと思って。学校にはもう連絡入れておいたから何も心配要らないよ」


「……っ」


そんな、勝手に……。私の承諾も無しに、決めたの……?


色んな感情に、涙が出そうになる。

身体が無意識に震えていたのか、かけていたシーツが落ち、裸姿になってしまっているのに気にもならないくらい、暗い気持ちになっていた。



「? 何でそんな悲しそうな顔をするの?」


尊くんが不思議そうに首を傾げる。

私がなんで悲しそうなのか全く分からないというような表情に苛立ちも募る。


「何もずっと学校行くな、というわけじゃないよ。でも、また何かあったら分からないだろうけど」


ポツリと呟いた声にゾッと背筋が凍る。

こんなこと繰り返えされたらたまったもんじゃない。


「そ、そんなのいーーー」


「あ。高校卒業したら家にずっと居てもらうことになるけど、いいよね。それまでは絢子に"自由"をあげてあげるから」


嫌だ、と続けようとした言葉を遮られた。


「自由……?」


何を言っているの。

自由の意味を尊くんは知っているのだろうか。

あげてあげる、だなんてこんなのが"自由"だというの?


自由だったら、学校に行く行かないも私が判断出来るはず。

なのに尊くんが駄目だと言ったら行けないだなんて、こんなの自由とは言わない。


「なに、その不満そうな顔。」


「っ! ご、ごめんなさい」


尊くんが不機嫌になったのが分かって血の気が引く。

咄嗟に謝ってしまう。


「絢子が辞めたくないっていうから高校も行かせてあげてるのに何でそんな不満そうな顔すんのかなぁ」


「っ、」


謝ったけど、尊くんの声音がワントーン低くなり慌てる。

確かに高校は行かせてもらえている。

それはありがたいことなのかもしれない。


だけど、その高校でだって尊くんから離れられるのは授業の時間だけなのに。


殆どが彼と一緒にいることを強要されて。

縛られていると同じだと思う。


「ごめんなさい……」


「僕は絢子の為に想って休むように言っただけなのに。……悲しいなぁ」


「っ!!」



ふいに私の目線に合わせるように屈んだ尊くんと瞳が合い、ゾッとした。

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