第4話

「……、」


認めたくない現状に、打ちひしがれる。

何で……こんなことに。

四条くんに声をかけられてたった数時間で生活がこんなにも変わるなんて思いもしなかった。



目を覚ました時、夢ではなく現実に起こった出来事だと嫌でも理解せざるおえなかった。


ベッドに寝かされてたらしく、私を見下ろすように四条くんが直ぐ傍にあった椅子で長い脚を組んで、頬杖をついていた。



『目が覚めた?』


『っ! いやっ、』



スっと頬に手を伸ばされて、思わず払ってしまったその手に青ざめる。

慌てて自分の首を守るように手で抑えると。

四条くんは冷たい目線を向けてきた。



『酷いなぁ。せっかく優しくしてあげようとしたのに……。君がいけないんだよ?』



そう低い声音で言ったかと思うと、私に覆いかぶさり、そして無理やり着ていた制服を脱がされた。


悲鳴をあげる私にお構い無しにーー。




「痛い……」


ツキツキと痛む下腹部と下肢に涙を流すことしか出来ない。

シーツには破瓜の証である血が滲んでいた。


レイプされたも同然の行為に、身体と心が悲鳴を上げる。

両親に助けて欲しいと頼んだとしても、四条の権力に適うはずもない。

それに、四条からの恩恵を受けることにあたって喜んで私を差し出たのだ。


助けてくれるはずもない。



いつの間にか制服はハンガーにかけられていて、ナイトガウンを着せられていた。

下着は着ていない為、裸も同然の姿だった。



「絢子、目が覚めたの? 初めてだったのに、無理させてごめんね。」



ドアが開き、中に入ってきた四条くんがベッドの上で泣く私に近寄り宥めるように頭を撫でた。



「でも、君が悪いんだよ。僕を拒絶なんてするから。君に酷いことはしたくないんだ」


「っ……」


「もう二度と僕を拒絶しないでね。絢子、返事は?」


「……はい。ごめんなさい……」



私が悪いの……?

でも、そこで何か言い返したらまた無理やり抱かれるくらいなら謝った方がまだマシなのかな。



「ふふ。うん、いい子。じゃあ、今度こそ優しく抱いてあげる」


「え?」



まさかの発言にヒュッと息を呑む。

震えた声が出た。


嘘だよね……?



「約束だったでしょ? 家で優しく抱いてあげるって。さっきのは絢子に拒絶されたのが悲しくて酷くしちゃったからね。」


「ま、待って下さい! い、痛いんです……っ」


「初めてだったんだから、痛かったのは分かるよ。でも、次はもう初めてじゃないんだから大丈夫でしょ?」


「きょ、今日はもう……」


「まさか僕を拒絶しないよね。ーーまた酷くされたいのかな」


「!!」



私にだって意思があるのに。

拒否権など無いかのような発言に、せっかく引っ込んだと思っていた涙がまた溢れた。



「絢子はもしかして酷くされた方がいいのかな?」


そんなの嫌だ。

必死に首を横に振る私の身体をゆっくり押し倒して、艶やかに微笑んだ。



「そうだよね。優しくされたいよね。なら、言って? 抱いてくださいって」


自分から言うなんて。唇を強く噛み締める。

何処までもドン底に落とす四条くんに私は、絶望に目の前が真っ暗になりそうだった。


痛いのも酷いことされるのも嫌だ……。

だから、私は四条くんの望がまま声にした。



「だ、抱いてください……」



早く気を失ってしまえれば、いいのに。

眠っている間だけは解放されるような気がして。

また私の身体へと手を伸ばす四条くんに目を強く瞑った。

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