第3話
連れてこられた部屋は、豪華で広かった。
そして異様だった。
部屋の真ん中に置かれている天蓋付きベッドはキングサイズはあるのではないかという大きさで、幾重にも重なった朱殷色のカーテンが部屋を覆い隠すようにあった。
窓が全くない。
ライトも何故か薄暗く、部屋の中には書棚とベッドぐらいしか見えなかった。
時計や、テレビといった情報を見る為のものが一切無いことに違和感を覚える。
「ここは……」
「君の部屋だよ。僕の部屋は隣。といっても、この部屋にいる時は僕が父さんの手伝いをしなくちゃいけない時とか、君を1人で待たせてしまう時ぐらいだけど」
「……」
「ここは本家とは離れだから。僕の両親が来ることはほぼ無いからね」
ぐるりともう一度見渡しても、広い部屋なのにも関わらず"窮屈"としか感じなかった。
まるで閉じ込める為の部屋、みたい……。
思わずゾッとした。
初めから用意されていたかのような部屋の造りに、震えそうになる。
無意識に後ずさりしてしまうと、四条くんに身体を抱き締められてしまった。
「ひっ!」
「気に入ってくれた? あぁ、涙を流して喜んでくれるなんて僕も嬉しいよ」
そんなんじゃない。
私はただ怖くて泣いているだけだ。それなのに、勘違いをして嬉しそうに微笑んでくる。
顔を近付けられて、またキスをされそうになり慌てて顔を背けようとすると。
「ぐっ、ううっ!」
「ふふ。ねぇ、僕から顔を背けようとしないで。」
首を思いっ切り絞められた。
息が苦しい……っ。
なんとか呼吸を確保したくても、四条くんは更に力を込めてきた。
呻く私に歪んだ笑みを浮かべた。
必死に首から手を離そうと、爪を立てて藻掻くけれど、離してくれそうもなかった。
このまま殺されてしまうのではないか……。
もうダメだ、と思った時。
「っ、ゴホッゴホッゲホッ」
漸く離れた手。一気に酸素を取り込み、咳き込んだ。
ヒューヒューと肩で息する私に四条くんは顔を上向きにさせると。
口端から垂れた唾液を、舐め取り、そのままキスをしてきた。
まだ呼吸が整っていない中でのキスに、クラりとする。
頭がおかしくなりそうになるくらいの激しいキスに、意思を失いそうになる。
「早く僕が居ないと生きていけないようになってね。僕の可愛い絢子」
息も絶え絶えの中、目を瞑っていた私の瞼を無理やり開かせると瞳を舐められた。
痛みと気持ち悪さに呻く。
四条くんは満足そうに笑みを浮かべ、もう何回目になるのか分からない程口付けをしてきたのだった。
きっといづれ、四条くんがいないと生きていけないようにされるのだろう。
そんな暗い未来に涙が溢れる。
ーー目が覚めたら全て夢だったならいいのに。
そんなことを祈りながら、私は意識を失ったのだった。
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